【第6回大学生対抗IRプレゼンコンテスト詳細】

<主催>

学生投資連合USIC

<後援>

株式会社日本取引所グループ、公益社団法人日本証券アナリスト協会、一般社団法人日本IR協議会

<協力>

複眼経済塾株式会社、Hibiki Path Advisors Pte. Ltd.

<メディア協力>

株式会社ストックボイス、株式会社産経デジタル(SankeiBiz)

<会場協力>

平和不動産株式会社

<参加上場企業(協賛)>※当日発表順

ライフネット生命保険株式会社、株式会社タナベ経営、三谷産業株式会社、PCI ホールディングス株式会社、株式会社シード、株式会社ディ・アイ・システム、日本工営株式会社、株式会社ウィル、株式会社日本取引所グループ、シナネンホールディングス株式会社、株式会社TAKARA&COMPANY、株式会社青山財産ネットワークス、武蔵精密工業株式会社(計13社)

<参加大学チーム>※当日発表順・サークル名省略

國學院大学、一橋大学B、同志社大学、高崎経済大学、愛知工業大学、小樽商科大学、西南学院大学、一橋大学A、慶應義塾大学、明治大学、北海道大学、東京大学、武蔵大学(計12大学サークル13チーム)

 2022年2月17日、証券・投資の街、日本橋兜町の「KABUTO ONE」より全国各地を結んで「第6回大学生対抗IRプレゼンコンテスト」が開催されました。新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえ、昨年に続き、今大会もオンラインでの開催となりました。

 

 本コンテストは、学生投資連合USICに所属する大学の各投資サークルが、上場企業の成長性や魅力などを取材・研究して発表するイベントです。約10分間に凝縮されたIRプレゼンテーションを行い、審査で「企業紹介・事業の強み・リスク・財務分析・業界分析・業績分析・作成資料・プレゼン姿勢・コロナ対策」9項目から成る定量評価 に定性評価を加え、上位校を「優勝・準優勝・第3位・審査員特別賞」として表彰します。第6回目となる本大会では、過去最大規模となる、13の上場企業と12大学のサークル13チームが参加しました。

 

 先立つ2021年10月15日には、大学サークルと企業の組み合わせを決める、マッチング抽選会が開催され、当日はオンラインで企業・大学サークル担当者約60名程が、全国から参加しました。参加企業からは「学生との活動が楽しみ・是非当社のことを学生に知ってほしい」、参加学生からは「知らない企業もありワクワクする」との声が聞かれました。抽選後、初の顔合わせとなるキックオフミーティングも行われ、以後2月の本大会まで、大学生が各企業の経営陣・IR担当者に取材し、独自の発想を基に分析、資料を作成するなど、プレゼンの準備を進めてきました。

 

 2022年2月17日は全国各地からオンライン上で、約100名の学生・企業担当者の方々が集まりました。審査会場の「KABUTO ONE」には、第一回大会より審査員をお願いしているお二方、日本アナリスト協会検定委員でもある、公益社団法人日本証券アナリスト協会の貝増眞氏と、会社四季報を活用した分析で高い知名度を持ち、講演会など全国規模でご活躍されている、複眼経済塾株式会社の渡部清二氏にお越し頂き、学生のプレゼンを見守りました。

 國學院大学チームによるライフネット生命保険株式会社のプレゼンを皮切りに、計12大学13チームの発表が白熱し、瞬く間に終わりました。審査時間中には、ブレイクアウトルームを活用した、企業担当者と学生の懇談が行われ、プレゼンを終え、ホッとした和んだ雰囲気でありながらも、各チーム工夫を凝らし、接戦となったプレゼンの審査結果を待ち望む、緊張した雰囲気でもあるように伺えました。

 表彰式では、審査員特別賞、第3位、準優勝、優勝の順番で発表し、併せて審査員のご講評もそれぞれ頂く流れとなりました。皆が固唾をのんで見守るなか、ドラムロールが鳴り響き…以下のように表彰されました。

<審査員特別賞 西南学院大学×日本工営株式会社>

 

■<1954 東証1部>技術コンサル大手、海外も強い

■審査員講評(渡部氏)

 

如何にIR担当者になりきって、企業をアピールし、その企業について面白いな、株を買いたいなと思わせるかをみていた。事業内容が難しい企業も多いなかで、より分かりやすく伝えることが重要だ。そのうえで、企業にも法人格という人格があるので、定量分析だけではなく、定性分析まで伝えられるかが大切だ。このプレゼンは「建設コンサルとは何か」から始まり、「リスク3つ・強み3つ」と絞ってまとめたこと、「競合比較」を行ったこと、「社長」などマネジメントに触れたことを評価した。資料枚数を超過せずに、もう少しコンパクトにまとめられれば…。

 

<第3位 慶應義塾大学×株式会社日本取引所グループ>

 

■<8697 東証1部>国内唯一の上場取引所、大半のシェア

■審査員講評(貝増氏)

 

どのチームも企業紹介・強みは各社の個性を捉えており、差がつかないなか、私はアナリストという立場で財務分析に注目し、更に株価評価まで踏み込めたかをみていた。このプレゼンは、会社が分かりづらいなか、上手に料理していた。特に「上場来の株価が7倍になっている」点にまで触れていたことを評価した。東証株価指数であるTOPIXインデックスと東証を運営する日本取引所グループの株価比較まで、もう少し踏み込んで欲しかった。

 

<準優勝 一橋大学A×株式会社ウィル>

 

■<3241 東証2部>阪神間で住宅販売、リフォームに強み

■審査員講評(渡部氏)

非常にバランスよく綺麗にプレゼンにまとまっていた。ポイントとなる「社名の由来」、中古住宅が資源高による新築物件高騰で、今後増加が見込まれるなど「背景」にまで踏み込めたことを評価した。また、落ち着いて聞きやすいプレゼンであった。新型コロナ感染拡大に関する項目で、むしろ逆手にとって成長できることをアピールできたのでは。

 

 参加した学生は、サークル活動のなかでも、分析・発表は行っているものの、10分という制限時間のなかで「組み合わせる情報で伝わり方が変わるのが大変だった」と話し、「自社の姿勢を示し、強みや成長性を感じていることを明確にする」ことが大切だといいます。そのなかで「実際に取材するなど細かい部分を理解することが重要」だと話しました。

 企業担当者は日本のIRについて「ネガティブな情報ほど会社の状態を正しく伝える努力と、売上・利益が下がったことについて評価する投資家側の情報の理解力を、双方からレベルアップしていくべきだろう」と実務者として感じていることに触れたうえで、「日本で投資に興味を持つ学生が増え、日本の金融をもっとよくしてくれるのを期待している。意欲ある学生たちとかかわって私たちも頑張りたい」と意気込みました。

 

<優勝 明治大学×シナネンホールディングス株式会社>

 

■<8132 東証1部>総合燃料商社、非エネ事業など多角化

■審査員講評(貝増氏)

気候変動抑制について「逆境エネルギー」という、事業リスクからストレートに踏み込み、同社の取り組みと方向性について説明できていた。「季節性」について上手に分析し、事業戦略によって縮小していくことを示せたこと、(企業側のご厚意の賜物であるものの)コロナ禍で「社長と直で取材」し、プレゼンに反映できたことを評価した。キーパーソンにお話を伺い、書いたレポートは迫力がある。

 

 参加した学生は「IRは堅苦しいイメージがあったが、企業との活動を通じて、より身近に感じるようになった」と話してくれました。公開情報の数字の扱い方について「正確ではあるが使いづらい。それをどうやってわかりやすく資料・プレゼンに落とし込めるか」が難しく、グラフや数字の見せ方を工夫したといいます。「生の情報を活かし、面白いストーリーで伝えられるか勉強になった。いろいろな場で活かしていけると思う」と意気込みました。

 企業担当者は本コンテスト参加の理由について「CSR活動の一貫として次世代育成を目標とするなか、IRを通じての金融リテラシー向上は貴重な機会だと考えた」一方、「投資に関心のある学生とコミュニケーションをとる機会は少なく、投資に興味を持ったきっかけなど知れ、企業活動にも有意義」とも語りました。学生のプレゼンについて「直面している状況を『逆境』と一言で表現し、立ち向かう背景や施策を一貫したストーリーでプレゼンできていた」と感じ、「厳しいマーケットの状況についても、グラフでみせる姿勢は、自ら発信する立場だと自重してしまうこともあるので、襟を正すきっかけとなった」と話しました。日本のIRについて「日本のマーケットが投資家から見放されつつあることを漠然と感じており、今後、東証の市場再編も控えるなか、マーケット自体の魅力を高めていく必要がある。いち企業としても企業価値を高めるための、努力をしていく」と意気込みました。

 

学生×IRの狙い

 学生にとって馴染みのないIR(インベスター・リレーションズ)は、どのように映ったのでしょうか。本大会は、第1回大会以来変わらず、学生が企業のIRの大切さを理解するとともに、そのプレゼンや分析能力を獲得することを通じて、日本の持続的な成長を願うものであります。日本ではIRを投資家向け広報と呼ぶこともあり、その意義・役割・評価について適切に理解されていないのではないかと感じております。経営陣と投資家の間に立ち、コミュニケーションを活性化させ、フィードバックし、良好な関係を築くことで、より良い企業の在り方を考えるプロフェッショナルだと思います。このIRの活用・運用の仕方で、企業の評価・競争力は格段に異なってくるでしょう。情報の発信のみならず、対話をし、戦略的に行動することが求められています。そのためには、情報収集能力は当然として、コミュニケーション・プレゼンスキルに加え、法務・財務といった知識まで必要となります。このようにみると、学生にとってIRがより遠い縁のない世界に感じてしまうかもしれません。しかし、学生が実際に現役のIR担当者等に刺激を貰い、IR活動に疑問・課題を見出し、自ら実践・改善していくというプロセスを理解することは、企業の役割が多様化するなかで、健全で安定した市場の維持と日本の成長には必要不可欠です。

 

 学生がIRについて競う、唯一無二のユニークな大会として、各方面よりご評価・ご支援頂いております。

 

<株式会社日本取引所グループ(東京証券取引所)>

近年、様々な金融商品・金融サービスを享受できる環境が整備される中で、学生に対する金融教育の重要性が高まっています。その観点で、大学生対抗IRプレゼンコンテストの開催は、企業への見方や評価を学ぶ良い機会であると言えます。参加学生においては真剣に取組む姿勢があったため、コロナ禍でも充実した議論や成果物の創出ができました。また、コンテストはオンライン開催であったものの、良い緊張感の中、内容の濃いイベントとなった印象でした。

 

<一般社団法人日本IR協議会>

 昨年に続き、コロナ下での開催は、意義深いものになったと感じました。参加なさった企業や学生の皆様にとっても、さまざまな発見や気づきがあったことと思います。業績が見通しにくく対話機会が限られた中での「withコロナのIR活動」は容易ではありません。切れ目なく対話を継続しようとする企業姿勢は、経営の透明性の証であると確信します。受賞したグループはもとより、参加なさった学生の皆様は、投資家の目線とともに企業経営の一端にもふれることができたのではないでしょうか。これから社会に出る皆さんの活躍で、経営の「羅針盤」ともいえるIR活動の質的な向上と拡大を通じて、日本の資本市場ひいては経済全体がさらに活性化することを楽しみにしています。

 

<Hibiki Path Advisors Pte. Ltd.(機関投資家)>

投資判断をする上で重要なポイントを凝縮したプレゼンで、会社発表の開示情報だけでは知り得ない、IR担当者や経営陣との対話を踏まえたアウトプットには学生の方々の熱意を感じました。

 

日本のIRの向かう先とは

 欧米を中心に発展を遂げてきたIRですが、日本でも政策保有株など株式持ち合い解消による安定株主が減少を辿り、外国人投資家・個人株主が増加するなか、独自の発展を遂げてきました。しかし今日では上場会社を中心に一般的になったIRですが、意外にも歴史は浅く、急速に普及したのは1990年~2000年代です。また、法定・適時開示とは異なり、厳密な決まりがないこともあり、上場企業のなかでも、IR活動に差があり、消極的な企業や行っていない(と受けとれる)企業も存在するというのが現実です。 

 その一方で、グローバル化が進み企業を取り囲む環境は刻一刻と変化するなかで、取引所や金融庁を筆頭に官民一体となって、これからの企業の在り方について模索されています。足元では東証の市場再編(市場区分見直し)、CGコード改訂やTCFDなど対応が急務であり、IRの重要性が一段と高まっています。

 IR活動と一口にいっても多岐にわたる訳ですが、コロナ禍では投資家とのコミュニケーションには一定の制限を受けております。1on1ミーティングのような小規模なものを除き、ラージミーティングをはじめ、オンラインでの対応が迫られるなか、最も大切な双方向の対話が上手く成せるかなど懸念点も多いでしょう。他方、情報開示の内容・方法は多様化が進んできたと感じます。近年、関心の高まる、無形資産やESG も含む非財務情報に係る開示も、浸透してきています。ガイダンスリスクのように、情報開示に積極的になることは一種のリスクとなるなか、開示のみならず、説明することが求められており、その先にある信頼を得られるかが課題となっています。横行しているSDGsウォッシュを鑑みるに、開示情報を吟味する投資家の姿勢も問われています。

 「良いIRとは何か」という難問に一つの答えを与えてくれるのが、本コンテストにもご後援頂いている、一般社団法人日本IR協議会が毎年表彰している「IR優良企業賞 」です。「IR優良企業賞 2021」のIR優良企業大賞を受賞した三井物産を例にみると、 積極的な対話機会、透明性と説得力、情報開示の拡充が評価されています。同様にご後援頂いている、公益社団法人日本証券アナリスト協会が毎年実施している「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」制度の2021年度でも、三井物産は商社部門で、ディスクロージャー優良企業として選定されています。経営陣のIR姿勢、説明会、フェア・ディスクロージャー、コーポレートガバナンス関連、自主的情報開示の5分野全てで高評価となっています。

 これらで表彰されている企業は大企業が多いことに気づきます。審査対象や選定プロセスにも起因しますが、上場会社であってもIRに対する、人手・予算が限られていることも事実です。IRの重要性が浸透し、社内でのリソースが十分に割り当てられることも今後の課題といえるでしょう。

 ここで問われるのが、IR活動の意味や効果についてです。長期的には企業価値向上・フェアバリューに寄与すると考えられます。大きな影響をもたらした、伊藤レポート(経済産業省『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト最終報告書)では企業と投資家の協創(協調による価値創造)や高質の対話も焦点となっています。本コンテストにもご後援頂いている、株式会社日本取引所グループ(東京証券取引所)伊藤邦雄氏を座長とし、実施す「企業価値向上表彰」においても、投資者らとの対話の重要性の認識や積極性がポイントの一つとなっています。

 エージェンシーコストの削減という所有と経営が高度に分離された現代には、IRは必要不可欠です。日本IR協議会の第28回「IR 活動の実態調査」によると、若年株主の開拓が喫緊の課題との共通認識がされています。企業サイドのみならず、若年層にも期待したいところです。投資に興味をもつと同時に、IRへの理解を深めることで、次世代のIRの担い手と受け手、双方のレベルアップを通じ、日本の持続的な成長を確信しています。「いつの日にか日本が金融大国になりますように」願いを込めて。

 

 

 依然新型コロナウイルスは猛威を奮っているなか、本大会が開催できましたのも、多忙な企業さまのご協力、お力添えがあったということに尽きます、改めて運営一同感謝を申し上げます。